979827 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

Selfishly

Selfishly

忘却の糧 1



(注!!)このお話は、18禁となります。
     暗くて、ロイ鬼畜でエロしかない話になりますので、
     お読みになる方は、それでも構わないと言う方のみ
     お願い致します。
     読まれてからの文句は、なしでお願い致します。
     それでもOKな方のみ、下にスクロールして下さいませ。
     


































『忘却の糧 1』



「さぁエドワード、起きて飲みなさい」
頭を抱えて、その口元に小瓶を近づける。
まだ意識が覚醒されていないエドワードが、嫌がるように小さく首を振るのを
ロイは抱え込んだ腕を狭めて、強引に口に咥えさせ、中身を流し込んでいく。
慎重に、慎重に。
大切な時間を作るための薬だ、一滴たりとも零すわけにはいかない。
喉が渇いていた事もあるのだろう、夢うつつの状態ながら、エドワードは
喉を小さく動かしては飲み干していく。
全てを飲み干したのを、注意深く確認をしてから、
ロイは抱えていた頭を下ろしてやり、眠りにつきやすいように身体を寛がせていく。
小さく聴こえてきた寝息が、規則正しくなるのを辛抱強く見守り続け、
ロイは優しく頬を叩いて、語りかける。

「さぁ、エドワード。 私に時間を捧げてくれ」
と。




「右翼班! 隊列が乱れてるぞ!
 頭で考えるな、頭で! 身体に叩っ込め!!」

広い演習場の隅まで届き渡る、良く通る声で、少しの乱れも許さずに
ビシバシと指示が飛ばされる。

「馬鹿野郎! 突撃のタイミングが遅れてる!
 そんな事じゃ、相手の陣営は崩せないぞ!
 情勢を見極めろ! 見極めたら、即突撃体制を取れ!」

演習場に張られた天幕で、ロイは目の前の訓練を
興味深げに眺めていた。
昔は自分が指導していたが、さすがに今の階級になっては
そんな事からも遠くなっていた。
現在、部隊の訓練をつけているのは、ロイの右腕で、参謀、懐刀と言われている
エドワード・エルリック少佐だ。
早朝からの訓練に、大柄な身体自慢の者達が音を上げそうな有様を見せていると言うのに、
彼は余裕綽々で、訓練を消化していっている。
あの小さな身体の、どこにそんなパワーがと、一緒に訓練を受けている者達の
畏怖と憧憬を集めているのだ。

うずうずと身体を揺すりながら、指示を飛ばしている様子に、
自分も加わりたいのだろうと察せられる。
司令官役の彼が、おいそれと前線に参加出来るわけは無いが、
もともと彼も武闘家だ、見ているだけは性分に合わないのだろう。

「エルリック少佐、そろそろ日が傾いてきたぞ。
 今日のところは、これ位にしておいてやりなさい」

ロイが立ち上がり、そう声をかけると、演習の訓練の終了を示している。
『え~!』と一瞬不満気な表情を見せるが、そこはさすがに軍での習性も
板に付いてきた、彼だ。

「はっ、了解いたしました。
 お~い! 本日は終了だ! お疲れさん」

先ほどまでの鬼司令官振りが、一変して、人好きのする青年に戻る。

「「「ありがとうございました!」」」

ザッと音の小波がおきるような乱れの無い敬礼が行われ、
礼の言葉が合唱される。

「おう、お疲れさん。 皆、良くやってるぞ!
 これなら、勝利は間違いなしだ!」

太陽のような満面の笑みを見せ、エドワードがそう告げて労ってやると、
泥だらけで、疲労困憊の有様の癖に、大喝采が巻き起こる。
それに気安く手を振り替えしてやりながら、エドワードが天幕へと戻ってくる。
片付は、残りの者に任せて、二人は揃って、軍の本部へと歩み戻っていく。

歩きながら、エドワードが期待に満ちた表情で感想を窺ってくる。
「どうだった?」
「そうだな、なかなかの出来栄えだと褒めておこうか」
そのロイの言葉に、よっしゃーと拳を固める青年に、ロイは小さく笑声を上げる。
「しかし、そこまで君が乗り気になるとはね」
横を歩いているエドワードをさりげなく見ながら、ロイが可笑しそうに呟いている。
エドワードは、汗で髪が張り付くのか、鬱惜そうに髪を項から跳ね除ている。
「良く言うよ。 軍の合同演習で常にTOPだったアンタに言われたくないね」
髪を除くように持ち上げる彼の項が、ロイの網膜に白く焼き付けられるようだ。
「・・・私は、まぁ、上を目指していたからね。
 が、君はそこまで固執しているようには、見えなかったんだが?」
答える間が少し空いてしまったのは、見惚れていたからだ。
「俺は別に、構わないけど・・・あんたの名前に汚点がつくのは、やなんでね」
さらりと返された言葉に、ロイが目を瞠る。
ロイの驚きを気配で察したのか、照れ隠しの為にぶっきらぼうに言い訳を
早口に伝えてくる。
「だって、しゃーないだろ! 俺らの隊名が、司令官の名前って決まりなんだから。
 所属の司令部の面々に、恥をかかせるわけにも行かないし!

 あ~あ、何で指揮官名じゃなくて、司令官名をつけんだか・・・」
ブツクサと文句を言いながら、足早に歩いていくエドワードに数歩遅れて、
ロイは小さな笑みを浮かべながら付いていく。

今、エドワードが必死になっている演習は、1週間後に行われる模擬戦闘の訓練だ。
数年に1度の割合で、繰り返されている演習は、それぞれの司令部の代表チームで
闘い、勝敗を決定する演習だ。
代々、司令官に一任された佐官が指揮官を勤め、隊の名前には司令官名を付けて、
勝利を捧げる慣わしがある。
自分の名前が刻まれているとあって、どこの司令官も熱が入る演習なのだ。
ロイは3度参加し、3度ともその時の司令官に勝利を捧げている。
今回は初参加のエドワードが、ロイの名前を掲げた隊の指揮官を勤める事になっている。
ロイとしては、模擬とは言え、そんな戦闘訓練に参加をさせたかったわけではないが、
遊び好きの総統からの願いと有っては、断るに断れなかったのだ。
最初にその旨を伝えたときには、面倒くさいだの、ダルイだのと
文句たらたらの憎まれ口ばかり叩いていたのに、いざ決定となると、
その日のうちに、対抗チームのリストやら、相手方の指揮官の経歴に戦闘の癖などと
情報を集めまくり、一晩のうちに作戦を組み立ててしまった。

そして本日の訓練と相成ったのだが、正直、エドワードの作戦体型は興味深い。
戦法の基本は、奇襲、その一言だ。
奇襲は、少数の人数で行うのが普通だが、エドワードはそれを平地上で大多数で
行おうとしている。
指揮の元、縦横無尽に隊列が動き、てんでに動いているように見えて、
一糸乱れぬ隊形を作っていく。
ロイが、その作戦に感服して、聞いてみたところ、
『戦時じゃないから、使える技だ』と笑いながら返された。
命を遣り取りするような場所では、危なくて使えないが、
訓練なら、思い切った奇抜な戦闘も試しやすいと言うところか。

どちらにしても、天才の彼だから考え出された作戦だ。
当日、頭の古く硬くなっている古狸達が、あわあわと慌てふためく様が
目に浮かんでくるようだ。
そして、真似しようにも真似する事も出来まい。
彼だからこそ、ああも見事に作戦を動かし、隊を動かしていけるのだ。
並の者なら、作戦に喰われてしまうだろう。

「次回からは、指揮官の名前を掲げることにさせよう」

そう笑いながら、後ろから告げてやれば。
「別にいいよ、司令官の名前で」
と、気の無い返答が返ってきた。
そんな短い言葉の中にも、エドワードがロイを支えてくれようとしている気概が見えて、
ロイの心を温かくしてくれる。

凛とした姿勢で、力強く進む姿を眺めながら、
ロイは公私とも手放せぬ相手とは、と考えて歩く。
有事には、互いの頭となり、手足となり、背後を護り抜く、共に闘える相手。
そして、私では自分に安らぎを与え、慈しみ慈しめる相手。
生有る限り共に歩み、死して後も魂を寄り添はせていたいと願える相手。
そんな者に廻りあえる者等、世の中にいるのだろうか、
・・・自分以外に。

いや、自分とて手になど入れてはいないのだ。
ただ僅かな時間だけ、目を盗んでくすねているに過ぎない立場だ。
『早く君を抱き尽くしたい・・・』
切実な願いは、欲望を膨らませて行くばかりだ。
夜毎、相手を陵辱する夢を見ては、独り寝の寂しさに気づかされる。
高揚する精神と、熱くなる身体を持て余しながら、
寝付けない夜を幾晩も狂おしくやり過ごす。
簡単に代わりを探せるくせに、代わりなどでは治まらないことも分かっている。
彼を知ってからのロイは、他の者など手に触れる気にさえならない。
極上の味を知ってしまえば、余韻が薄れるのさえ厭わしくなる。
だから、誰の身体も触れはしない。
代わりに、夜毎に夢で必死に相手を感じようとする。
記憶は願いに忠実で、本能に親切だった。
リアルな感触は、実際の体験を元に再現され伝えられていく。
願いはロイの願望が混じりあい、ロイを喜ばせようと創り上げていく。
有り得ないほど淫らに、そして素直に自分に身体を拓く相手は、
骨の髄まで、ロイを虜にしていき、欲望の果ての至福を与えてくれる。
欲望に染まった瞳を、歓喜の涙で飾り、惜しげもなくロイの名を叫んでは果て、
どんなに手荒に扱おうとも、表情には歓喜が彩られ、声は艶を含んだ嬌声を奏でてくれる。

そんな事は、有り得ないことなのに・・・。

なのに夢見てしまうのは、現実手に入らぬ相手だからか。
いや・・・、手には入るのだ。良心を売り渡しさえしてしまえば、いつなりと。
限りある時間だけとは言え、夢のように消えうせる幻ではなく、
ちゃんと血肉を備え、熱い血潮を感じさせてくれる肢体が。

そして、知ってしまえば、後戻りが出来ないほど虜にされていた・・・
ただ、それだけなのだ。

どうして、愛しむ思いだけでは満足できなくなるのだろう。
ロイが最初に思って身を引こうとした時は、確かにエドワードの幸福だけだったはずだ。
なのに、何故? こんなににも、薄汚れた欲望だけが、
身も意志さえも突き動かすことになってしまったのか・・・。
それとも、それが本当の自分の姿だったのだろうか。
人としての最低の思いやりも、情愛も無く、
獣のように相手を蹂躙し、喰らい尽くすだけの、浅ましいイキモノ。
それが自分の成れの果てで無いと、誰が保障してくれるだろうか。
自分の行っている行為をしれば、皆が自分と同様の意見を唱えるだろう。
浅ましい、穢れたイキモノだと・・・。


「なぁ、中将。 中将ってば!!」
気づけば建物の中まで戻ってきていたことを、呼びかけで意識を戻して初めて知った。
「あっ、ああ、どうした?」
暗い考えに相応しい、沈んだ気持ちで、自分を振り返る眩しい光を見つめ返す。
「どうしたじゃないよ。 俺は先にシャワー浴びてくるけど、あんたはどうすんのかって」
将軍と少佐の二人が、訓練だけで仕事を終えられるはずも無い。
この後に、日常の業務が待っているのだ。
「そうだな・・・。 私は先に部屋に行ってよう。
 連絡が必要な件もあるだろうから」
訓練に参加していたわけではないロイは、エドワードのように汗と泥まみれでもない。
「わかった、じゃぁすぐ行くから・・・さぼんなよ」
その言葉に、ロイはガックリと肩を落として、渋々了承を伝える。
ロイの両補佐官は、鬼よりも怖いのだ。
一人なら出し抜くことも可能だったが、今や二人。
タッグを組まれてしまってからは、ロイに勝てる見込みはなくなって久しい。
が、それも別段不服は無い。 それだけ彼が、常に傍に居てくれると言う事だから。

先に入った仮の執務室で報告を受け、連絡を取っている間に、
エドワードも入って来た。
余程急いでやってきたのか、髪に雫を滴らせ、上着は肩に羽織ったままだ。
ボタンを申しわけ程度にかけたシャツからは、彼の白い肌が見えている。
ロイはそんなエドワードを見て、思わず眉を顰める。

ーーー彼はそんな無防備な格好で、ここまでやってきたのだろうかーーー
そう思うと、多分その姿を目撃した相当数の人間達に、怒りが込上げてくる。

そんなロイの思惑など気づきもせず、エドワードは髪をタオルで拭きあげながら、
積まれている書類を確認している。
火照った身体を冷ましたいのか、シャツをしきりと叩いては、
熱を散じている。
仄かに色付いた、湿り気を帯びた肌に目が行くと、そこから剥がせなくなる。
その情景が連想させるものを、否がおうでも思い出させてくれる。

ドクリ 
と、身体が脈打つ。
部屋の中には、エドワードが使った石鹸の香りと、彼の匂いが混じり合って、
ロイの鼻腔を刺激してくる。
ズクズクと兆しを刻み始める身体に、ロイの理性が決壊しそうになる。
ロイは拳を固く握り締めて、自分の理性の補強と修復に
全力を尽くさなくてはならなくなる。

『中将? 聞いておられますか、中将?』
訝しそうな声が耳に飛び込んで、初めて電話の相手を思い出した。
思い出すと、長年の習性か、頭に上がった熱が、少しずつ下がってくる。
「ああ・・・、ありがとう。 聞いているよ」
危うい処を助けられたものだ。
ロイは、全身の力が抜ける思いで、電話の相手に礼を告げる。
『はっ? 何か?』
不思議そうな問いかけに、何でもないと答えながら、
その後の報告を済ませてしまう。

電話を切ると、待っていたとばかりにエドワードが声をかけてくる。
「中将、この件だけどさ」
「エルリック少佐。一つだけ、注意しておきたい事がある」
「・・・はっ」
ロイがこうして改まった口調で自分を呼ぶときは、
余り機嫌が良くないか、重要な軍事の事が多い。 咄嗟に、自分の態度を切り替える。
「余り規律の乱れを巻き起こすんじゃない」
「・・・はいっ?」
緊張して待っていたせいか、エドワードが当惑を見せてくる。
「衣服の乱れは、軍規の乱れ!
 下士官ならともかく、君は佐官なんだぞ。 皆の手本となる格好を心かけなさい。
 わかったかね!」
ロイの言葉に、エドワードの瞳がパチクリと瞬かれる。
それも当然だろう、今までそんな事を口喧しく言われたことなどないのだから。
「返事は?」
ロイの再度の催促に、エドワードは不満を消して敬礼する。
「わかりました!」
半場、やけくそ気味に言われた返事だが、口にした事は守る彼だから、
信用して大丈夫だろう。

本部では、自分の指導官が女性だったり、女性職員も多かったため、
それなりに節度を心かけていたのだろうが、今回の訓練には女性は殆ど参加していないから、
男同士の気安さが、彼に隙を生んでいる。
『それが一番、怖いと言うのに・・・』
エドワードの無防備な姿に、不埒な思いを抱くものが出ないことを
望み薄に願うだけだ。




《 あとがき 》
久しぶりの更新です。
何度も覗きに来て下さっていた皆様には、
本当に、お待たせしてしまって、申し訳ありませんでした!
夏大イベントも終わりました。
そろそろ、サイト3周年記念と10万ヒットのダブルがありそうなので、
WEBサイト更新に力を入れていこうかと思います。
宜しくお付き合い下さいね~!


  ↓面白かったら、ポチッとな。
拍手










© Rakuten Group, Inc.